新しい歴史教科書をつくる会|10月30日付の貴方返信に基づく話し合いの開始について

HOME > 育鵬社盗作問題の交渉及び全経過 > ④10月30日付の貴方返信に基づく話し合いの開始について(つくる会→育鵬社グループ)

(資料④)

平成24年11月6日

株式会社 育鵬社 代表取締役社長 久保田 榮一 殿
育鵬社刊『中学社会 新しい日本の歴史』 執筆者代表 伊藤 隆 殿
一般財団法人 日本教育再生機構 理事長 八木 秀次 殿
改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(略称・教科書改善の会)
代表世話人 屋山太郎 殿

新しい歴史教科書をつくる会
会長 杉原 誠四郎

10月30日付貴方返信に基づく話し合いの開始について

拝復 当会より、貴職方にお送りした10月23日付「『盗作問題』解決のための話し合いの申し入れ」に対し、10月30日付「10月23日付の貴信に対する返信」をいただき、厚く御礼を申し上げます。

 ご返信にありますように、当会も長年にわたり教科書改善運動を熱心に支えて下さっている全国の心ある皆さまに、無用のご心労をおかけすることについて、深く憂慮いたしております。それゆえ、早急に懸案の解決を図るべく、この度、「話し合い」の申し入れを行った次第です。これに対し、貴職4名の連名にて「両者にとって不幸な今日の事態の改善を求めての話し合いならば応ずる」「『話し合いの申し入れ』を拒否することはいたしません」とのお返事に接し、安堵いたしました。貴職方の勇気ある英断に敬意を表します。

 ただし、貴職方は話し合いを開始するにあたり、「貴会の申し入れから、貴会がいう「『盗作問題』解決のための」を削除していただくことを、話し合いに応じる前提条件として」求め、「この条件が実行されない場合は、残念ながら当方としては話し合いに応じられない」と述べておられます。

 盗作された側が、紛糾の拡大を避けるために「話し合い」を提案したのに対し、盗作した側が条件をつけてくるというのは、普通の感覚からすれば、首をかしげざるを得ません。しかも、この条件提示は、双方にとって重要な事項であるにもかかわらず、曖昧な表現になっています。すなわち、(1)「『盗作問題』解決のための」という限定を解除して、ほかのもろもろの問題もあわせて話し合いの対象にして欲しいのか、それとも(2)「盗作問題」そのものを話し合いの対象から除外して欲しいのか、文面だけからは判断に苦しみます。

 しかし、当会としては当然、(1)の意味と理解いたしました。その理由については、あらためて述べるにはおよばないでしょうが、大切な点なので、念のために申し上げておきます。

 第1に、当会は、他でもない「盗作問題」を解決するために話し合いを申し入れたのであって、この問題を除外するなら、そもそも話し合いを行う理由はどこにもありません。にもかかわらず、話し合いに「応ずる」としながら、肝心要の盗作問題だけは除外する、といった不誠実かつ非常識この上ない回答を、貴職方がなさるとは、到底考えることができません。それは事実上の話し合い拒否以外の何者でもありません。

 第2に、貴職方は「両者にとって不幸な今日の事態の改善を求めての話し合いならば応ずる」とおっしゃっています。「盗作問題」の解決なくして「事態の改善」があり得ないことは、火を見るよりも明らかです。

 第3に、育鵬社代理人・内田智弁護士から『改訂版 新しい歴史教科書』代表執筆者藤岡信勝氏代理人・福本修也弁護士宛に送られた10月
30日付「返信書」の文面からも、(1)の意味であることは疑問の余地がないでしょう。そこには、「『盗作問題』解決のための話し合い申し入れ書」を「問題解決のための話し合い申し入れ書」と短く言い換えた上で、「当社(育鵬社)は、この『問題解決のための話し合い申し入れ書』に、話し合いによる問題解決を図る余地を考えている旨、上記四名連名にて返信する所存です」と書かれてあります。文中に「問題解決」とあるのは、上記の通りすべて「『盗作問題』解決」の言い換えですから、育鵬社を含む貴方返信の趣旨も(1)と理解するしかないことになります。

 以上、分かりきったことを長々と書き連ねたご無礼を、どうかお許し下さい。

 当会は広い心をもって、盗作問題をはじめ、あらゆる問題について、貴職方と率直かつ前向きに、話し合う用意があります。

 貴信中には、遺憾ながら「やむなく貴会と袂を分かたざるを得なくなって」「『石もて追う』かのごとく、貴会の名において非難がつづけられ」
「いわれない盗作を前提とする」等、当会としては到底黙過しがたい表現が散見されます。とくに、当会関係者が起した訴訟は「すべて受け入れられず」と記されている個所は、当会編『歴史教科書盗作事件の真実』(自由社)146~149ページにある平成21年8月25日東京地裁判決に明らかな通り、歴然たる誤りです。東京地裁は、当会関係の執筆者が個々に独立した著作権を有することを、明確に認めています。

 しかし、それらについても、同じテーブルにつき、胸襟を開いて、事実に基づき、誠意を尽くして話し合えば、一つ一つ決着をつけることができるでしょう。大切なのは、話し合いを始めることです。そこで、早速、盗作問題を含む「あらゆる問題を解決するための」話し合いを、近日中に開始いたしたく存じます。

 ここから先は、日程調整など、事務的に進めてゆけばよいと考えますので、当方の事務連絡の窓口は、事務局長の越後俊太郎がその任にあたることをお伝えいたします。貴職方の窓口になっていただく方のお名前につきましては、11月13日午後5時までにお知らせいただければ有難く存じます。

 以上の点につき、もしご異存等がある場合も、同じ期限内に書面にてご返答いただきたく、お願い申し上げます。

 なお、当会といたしましては、問題の公共性に鑑み、社会に公開しながら公明正大に話し合いを進めていく必要があると考えています。つきましては、今後、相互に発信される文書などもすべて公開されるべきであると考えておりますので、その点、あらかじめお含みおきくださいますよう、あわせてお願いいたします。

敬具