帝国書院――最も改善された教科書、しかし自虐ぶりは他社より極端
日本が人種差別禁止条項を提案したことを記す
最近30年間ほどの歴史教科書の内容に鑑みれば、今回、帝国書院の記述は、驚くような変化をした。第一に、秀吉の朝鮮出兵について、「朝鮮侵略」から「文禄・慶長の役」に小見出しを変化させた。「文禄・慶長の役」とは正式名称への復帰に過ぎない。だが、自由社や育鵬社以外の教科書は、判で押したように「秀吉の朝鮮侵略」という小見出しを使っていただけに、大きな改善と言える。
第二に、帝国書院は、「人権 人種差別撤廃への道」という小コラムを設け、「パリ講和会議のさいには、国際連盟の規約をつくる会議も行われました。その会議で日本は、人種差別撤廃を規約にもりこむことを提案しました。国際的な場で、人種差別撤廃が提案されたのはこれが初めてでした。……植民地を多く持つイギリスやアメリカが強く反対し否決されました」と記している。日本が人種差別禁止条項を提案したことは重要な世界史的事実であるにもかかわらず、日本の歴史教科書は無視してきた。今回、自由社、育鵬社に続いて、帝国書院がこの史実を取り上げたことは、歴史教科書の改善を示すものと云えよう。
祖国高麗の思想――元寇をめぐる記述
このように帝国書院の記述は大きく改善された。だが、それでも、中韓が関わってくる古代や中世の部分では、対中韓隷属史観が著しい。例えば、元寇の箇所では高麗を祖国と考えるような思想が垣間見られる。まず帝国書院は、高麗が元に対して30年間抵抗したと述べた後、「この抵抗が元軍の日本遠征をさまたげる要因となりました」と書く。「日本遠征」という形でモンゴル襲来を美化していることにも驚かされるが、帝国は、高麗のおかげで日本が助かったとするのである。しかも帝国書院は、元寇後について「暴風雨は日本の神々が国を守るために起こしたものと考え、日本を「神国」とし、元軍の一員として戦いをまじえた高麗(朝鮮)のことを低くみる思想が強まっていきました」と記し、高麗差別思想が強まったと、他社には見られないことを記すのである。
日本軍の「悪行」を並べ立てる沖縄戦記述
また、近代の戦争関係でも、自虐史観ぶりが目立つ。それも極端な形で表現されている。最もすさまじいのが、沖縄戦記述である。帝国書院は、沖縄戦の頁を1頁から2頁に拡大し、日本軍の「悪行」として、住民を集団自決に追いこんだ、濠から追い出した、食糧を奪った、方言を使った住民を殺害した、マラリア発生地に移住させた、等の事柄を記している。これほど日本軍の「悪行」を並べ立てる教科書は、学び舎以外には存在しない。帝国書院は、最も改善された教科書ではあるが、最も極端な自虐思想をふりまく教科書でもあるのである。
平成27年7月27日更新