国連の正しい訳語と敵国条項……国際社会及び国連の捉え方
敵国条項を無視する東書等4社
国際社会及び国連に関する記述を見ると、大きく2グループに分かれる。1は、東書、日文、教出、清水の4社であり、採択率から言っても完全に多数派である。2は、帝国、育鵬社、自由社の3社であり、採択率を加味すれば明らかに少数派である。
東書等の多数派は、国際協調の観点からのみ国際社会を捉え、国益という観点をもっていない。したがって、決して、国際社会を競争社会とは捉えようとしないのである。
実際、4社とも国益という言葉さえも用いないし、他国の国旗国歌を敬重せよとは説いても、自国の国旗国歌を尊重せよとは決して言わない。それゆえ、4社は、国連を平和機構とのみ捉えて、その正式名称が連合国であることは決して記さないし、日本やドイツ等に適用される「旧敵国条項」の紹介もしない。
また、教出を除く東書等3社は、中国や韓国等が猛反対する中で日本が推進した常任理事国化の運動にも言及しない。常任理事国化の運動にふれる教出にしても、この運動に対して賛成意見と反対意見を述べるだけとなっている。
国連の正体を示した自由社
これに対して、自由社等の3社は、国際社会を競争社会とも捉えている。帝国は、自由社や育鵬社と異なり、国益という言葉を用いない。だが、新たに作成した【領土をめぐる問題】という単元では、「世界では領土をめぐる争いが起こり、戦争にいたるものも少なくありません。その大きな原因は、国と国との利益の対立です。どの国もその領土を広げ、多くの資源を手にしようとするならば、国と国との争いが続いてしまいます」と述べている。明らかに、帝国は、国際社会を競争社会と捉えているのである。
それゆえか、3社は、国連の旧敵国条項の説明を行う。その中でも、自由社の説明は最も原則的であり、明快である。
自由社は、育鵬社や帝国とは異なり、国連の正式名称が連合国であることを明記する。すなわち、「国際連合の正式名はUnited Nationsだが、これは第二次世界大戦のときのイギリス・アメリカなどの『連合国』を意味する。国連発足時、日本などは敵国として位置づけられ、今日もなお、敵国条項が残っている」と述べている。
このように書かれれば、敵国条項がある理由がすっきりと分かる。是非とも、今後は、全社の公民教科書に、自由社のような記述が登場することを願うものである。
平成27年7月1日更新