各社の教科書を読む 歴史編8|新しい歴史教科書をつくる会

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日露戦争‐中韓隷属史観に毒された世界史的意義




日露戦争は我が国にとって明治維新以来の最大の国難であった。19世紀末以降、ロシアは満州・朝鮮への影響力を強め、極東における軍備増強を進めており、日本は存亡の危機にあった。そんな中、日本は国家存立を賭けた開戦を決断し、奇跡的とも言える勝利を収めた。

この勝利は、近代戦争において有色人種が白色人種に勝利した初めての事例であり、ロシアとその他西洋列強に抑圧されていた諸民族に独立の希望と勇気を与えた世界史的事件であった。

事実、多くの独立運動の指導者たちがこの時の衝撃を言葉に残しており、当時の日本の同盟国イギリスやロシアに国を奪われていたポーランド等の教科書では日本の教科書と同等以上に日露戦争について記述している。


中韓隷属史観に毒された日露戦争の意義

しかし、残念なことに世界が評価する日露戦争の意義をほとんどの歴史教科書は正しく評価できていない。

例えば帝国書院は次のように日露戦争勝利の世界的影響を記す。
「植民地支配に苦しむアジアの人々に、近代化や独立への希望と自信を与えました。」と日本の勝利の意義を一応は書きながら「アジア諸国の期待とは異なり、日本は韓国の植民地化を進め、陸軍・海軍の軍備を増強させるなど、帝国主義としての動きを活発にしていきました」と併記する。「アジア諸国」と書くが、日本が日露戦争で勝ち得た期待を「裏切った」と評価するのは反日のイデオロギーに凝り固まったごく一部の国家でしかなく、これは生徒に誤った認識を与える中韓隷属史観に基づいた記述であると断じざるを得ない。

その他、東京書籍、清水書院、学び舎もほぼ同様に、アジア・アフリカの独立や近代化の機運を高めたが日本は期待を裏切った、西洋諸国と同じく帝国主義国家としてアジア諸国を支配・搾取する側の仲間入りをしただけであったという趣旨の記述を行う。

東京書籍は平成23年版では、アジア諸国の近代化・独立運動への影響というプラスの評価のみを記していたが、27年版では「しかし、日本は新たな帝国主義国としてアジアの民族に接することになりました。」の一節を挿入し、日露戦争の意義については自虐史観に舵を切ってしまった。


世界に視野を広げ評価する自由社

中韓隷属史観に毒されることなく日露戦争の意義を記述しているのは自由社、育鵬社、教育出版の3社である。3社は日露戦争勝利の世界史的意義を正しく評価し、これを日本のアジア支配の始まりとは位置づけず、西洋諸国との新たな緊張関係の始まりととらえる。

特に記述が詳細なのが自由社であり、1頁の大コラムを設け、孫文・ネルーをはじめとした世界の独立運動の指導者たちの日露戦争への反応を紹介する。

また自由社は、単元本文では「世界を変えた日本の勝利」という小見出しを設けて、アジア・アフリカのみならず、ポーランドやフィンランドといった東欧・北欧諸国にも視野を広げ、日露戦争の勝利が「国家防衛の勇気をあたえた」と記述している。こうしたヨーロッパへの影響を記述しているのは自由社が唯一である。

さらに、側注では「日本の勝利を歓迎したトルコのイスタンブールでは、東郷や乃木にちなんで、通りにトーゴー・ソカタ(東郷通り)、ノギ・ソカタ(乃木通り)という名をつけた。フィンランドは東郷の顔写真を入れた「アミラール(提督)」というビールをつくった。」と世界に与えた衝撃を具体的に記してもいる。

日露戦争は、明治維新以降の日本の近代化の歩みの一つのクライマックスであり、世界中の人々に独立の希望と勇気を与えた世界史的事件である。世界の多くの国では当たり前に評価されているこのことが、我が国の教科書では、特定の国の歴史観に引きずられ、正当に評価されていないことは残念でならない。






平成27年7月8日更新