異様な歴史教科書の出現(学び舎)
新規参入歴史教科書会社「学び舎」が発行した『ともに学ぶ人間の歴史』が、文部科学省のお墨付きを得てしまった。
これまでの教科書改善運動の根底を揺るがす一大事として、強く抗議するとともに、その影響力を早期に封じ込めるあらゆる施策を取らねばならないと考えている。
問題の教科書の目次は、近現代史のごく一部をみても、異様さに驚かされる。
第9章 第二次世界大戦の時代
(4)鉄道爆破から始まったー日本の中国侵略
(10)赤紙が来た―戦時下の国民生活
(11)玉砕、餓死、特攻隊ー戦局の転換
(12)町は火の海ー本土空襲
(13)荒れ狂う鉄の暴風ー沖縄戦
(14)にんげんをかえせー原爆投下
第10章 現代の日本と世界
(2)もう戦争はしないー日本国憲法
(6)ゴジラの怒り、サダコの願いー原水禁運動
(7)国会を包囲する人波ー日米安保条約の改定
次に記述内容を見てみよう。例えば、日米安保に関しては、「民主主義を守れ」「戦争反対」の小見出しの下、「安保条約によって日本は戦争に巻き込まれるのではないか、戦争になったら大変だと思い、デモに参加することを決心しました。プラカードを持ち「いっしょに歩きましょう」と呼びかけると、二人で歩き始めたデモに大勢の人が加わって、300人ほどの列になりました。」(270頁)
このほか、一単元見開き2頁で、「女一揆(米騒動)」、あるいは戦前、小作争議を指導した政治家である「山本宣治」を掲載する力の入れようである。
在来の「自虐史観教科書」がまともに見えてくる錯覚をしてしまう。執筆者らは、元社会科教員だ。自分たちが既成の教科書に飽き足らなくて、こっそりプリント学習をしていたその原稿を教科書にしたようなものである。
また、重要人物として取り上げている人びとには、朝鮮民族革命運動家、辺境民族の指導者、社会主義者、女権拡大運動家、労農運動政治家などが多く見受けられる。
反権力闘争の歴史観、東アジアの盟主として中国(支那)を奉る事大主義史観に満ち溢れ、日本の国家体制や軍隊を敵視し、抗議行動を煽動するための宣伝チラシのようだ。実に「抵抗」「立ち上がる人びと」のような言葉が実に多数出てきくる。これが文部科学省検定合格した教科書である。
責任者の検定調査審議会委員・歴史小委員長が、自由社と抱き合わせにストライクゾーンを広げたのだ、と言ってのけたようだが、著しくバランスを欠いた、学習指導要領そっちのけの教科書を何で合格させたのか。まさに「逆コース」だ。
平成27年6月22日更新