各社の教科書を読む歴史編 東京書籍|新しい歴史教科書をつくる会

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東京書籍――華夷秩序理論と共産主義思想の吻合癒着




今日の中学校歴史教科書は、第一に歴史の中心部分の流れが分からない、第二に対中韓隷属史観、第三に共産主義思想、第四に東京裁判史観、第五に琉球とアイヌに関する歴史の歪曲、といった5つの特徴をもっている。

社会科教科書の最大手である東京書籍は、5つの特徴をすべて持っており、第二と第三の特徴を最も代表する教科書である。第二の特徴からふれれば、東京書籍は、日本は19世紀まで中国を中心とする華夷秩序体制の中で生存してきたとの虚構を築く。そして、中国は東アジア世界で最も古い文化と歴史を誇る国であり、韓国は中国文化をいち早く学んで日本に教えた文化の恩人の国であり、日本は中国及び韓国から一方的に文化の恩恵を受けてきた最も新参の国である、という歴史物語を紡いでいく。


縄文文化開始を遅く、「中国文明」成立を早く設定する

そのために、東京書籍は、まず縄文文化の開始時期をできるだけ遅く設定しようとする。平成18~23年度版までは開始時期を1万年前としていたし、現行版も今回も1万2千年前とするにすぎない。ちなみに、今日の中学校歴史教科書の中では、1万5、6千年前とするのが多数派となっている。

次いで東京書籍は、中国という国を実際よりも古く見せるために、四大文明の一つとしての「黄河文明」という言い方を「中国文明」に転換する動きを平成14~17年度版以来主導してきた。そして朝鮮半島関係では、弥生文化の基盤となった稲作伝来について、「紀元前4世紀ごろ、大陸(おもに朝鮮半島)から移り住んだ人々によって、稲作が九州北部に伝えられ、やがて東日本にまで広まりました」と記している。

朝鮮半島伝来説は、最近では各種学界で完全に否定されている。にもかかわらず、東京書籍の場合は、「大陸(おもに朝鮮半島)から」とあるように、大陸からの直接伝来よりも朝鮮半島経由の伝来を重視した書き方をしている。何が何でも、全ての文化は朝鮮半島経由で日本に伝わったという図式を維持したいのであろうか。


唯一、節見出しで「中国侵略」と大書する東京書籍

こうして東京書籍は、中国と韓国を文化的恩人として描いた上で、近代日本は中国と韓国を侵略し大きな被害を与えたという物語を展開する。日本犯罪国家観の展開である。韓国統治を全面的に悪政として、朝鮮人徴用を強制連行的なものとして描くし、「南京事件」を「南京大虐殺」とも記す。そして何よりも、第6章2節「世界恐慌と日本の中国侵略」という節タイトルの下に、満州事変と日中戦争について記している。節タイトルの中に「侵略」という言葉を入れているのは、東京書籍だけである。学び舎にしても、「侵略」という単語は単元見出し及び小見出しの中で用いるだけであるから、東京書籍に見られる対中韓隷属史観の突出ぶりがうかがわれよう。


ロシア革命を絶賛する

この対中韓隷属史観を華夷秩序体制の理論とともに支えるのが、共産主義思想である。東京書籍は、ロシア革命の負の側面を一切書かず、「ロシア革命は、資本主義に不満を持ち、戦争に反対する人々に支持され、各国で社会主義の運動が高まりました」と美化するのみである。全社の中で最もロシア革命を美化するのが東京書籍である。更に驚かされたのが、日本社会主義同盟の結成を日本共産党結成の前に記していることである。日本社会主義同盟は、大正9(1920)年にアナキストとマルクス主義者が大同団結してつくられた社会主義組織であるが、1年半ほどで空中分解してしまった組織である。このように歴史におけるマイナーな組織を、しかも単元本文で記すとは、本当に驚かされた。東京書籍には、共産主義に対する愛着が強固に存在するようである。

共産主義思想は、「弱者」や「被害者」とされる存在の立場を過剰に代表する傾向をもつ。近代史においては中国と韓国は「弱者」や「被害者」の位置を占めるとされてきたから、共産主義思想が対中韓隷属史観を支えることになるのである。

要するに、華夷秩序理論と共産主義思想を吻合癒着させて、中韓への隷属を説くのが東京書籍であるということになろう。





平成27年7月9日更新