「史」から~親中反日主義の愛国者、潘基文国連事務総長|新しい歴史教科書をつくる会

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親中反日主義の愛国者、潘基文国連事務総長



2006年潘基文氏が国連事務総長に選出されたとき、日本の麻生外相は「彼は外交のプロだ」と持ち上げたものだ。当時から外交関係者の間には潘氏の力量についての懸念も囁かれたが、しかしその志向がここまで利己的、独善的であるとは、だれが想像していただろう。

この2か月間に起きたことを想起しておきたい。

9月3日、潘氏は世界と日本の忠告を振り切って反人権、反民主主義、反日の式典、中国の抗日戦勝70周年軍事パレートの天安門広場のお立ち台に立った。1989年、広場では天安門事件が起き、学生らが戦車に踏みつぶされた。その場所で催される習近平氏の権力誇示と軍事力示威の「抗日戦勝記念日」に、欧米首脳はこぞって欠席を決めた。出席したのは世界の独裁者と非民主国家の首脳、そしてロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領、国連の潘基文事務総長であったわけだ。

潘氏の参席については日本の菅義偉官房長官が「国連の中立性に違反する」と懸念を表明したが、これに潘氏は「国連や国連事務総長に求められているのは中立性ではなく公平性だ」と詭弁を弄した。菅氏は「言葉遊びをしているようにすら感じる」と述べたものだが、こうした苦言も自身のため立場を活用しようとする潘氏の耳には全く届かなかった。

習近平氏は、1万2000人の兵士を閲兵し500以上の戦車やミサイル、200機以上の最新鋭軍用機を前に「中国は今後、覇権主義を追求することはない」などと演説した。そんな習氏とともに演壇に並んだ首脳らと潘氏は、中国の覇権を歓迎し、その恩恵に何かしら恃むところのある人々なのである。

潘氏は訪中の日程を割いて中国の道教の聖地で名高い泰山に夫人を伴って登った。この山は中国の始皇帝以来の歴代皇帝が天と地に王の即位を知らせる「報禅」という儀式が行われてきたことで有名で、韓国では大統領になりたい政治家の憧れの場所であった。


潘氏の本当の姿は「韓国総領事」!?

場所は変わって米ニューヨーク、国連総会で潘基文氏がみせた朴槿恵韓国大統領への配慮は、「事務総長(Secretary General)のSGではなく、韓国総領事(South Governor)のSGだ」と皮肉られた。朴氏が到着するや事務総長公邸で晩さん会を開き、国連総会では韓国を優遇して2年連続で7番目の早い順番での演説をセットした。朴槿恵氏の父、朴正煕氏の行政を讃える「セマウル運動高官級特別行事」を開き、朴氏の現れる会合には必ず同席して、公式、非公式にかかわらず朴氏を称賛しサポートした。

潘氏の事務総長職の任期は来年12月で終了する。これは韓国の次期大統領選のちょうど1年前となる。自身は出馬を明言していないものの前評判はウナギ上りだ。5月に行われた「大統領の適正」を問う韓国の世論調査では潘氏が36.4%でダントツ1位、9月の次期大統領候補者世論調査でも21.1%で現職政治家を7%も上回っての1位だった。朴槿恵氏の陣営からは潘氏待望論が早くも花盛りである。

韓国にとって国連は特別な国際機関である。分断後の1948年、はじめての総選挙を国連の管理下で行い、朝鮮戦争では国連安保理の派兵決定で米軍(国連軍)の元で国土を守った。冷戦によって国連加盟が遅れ、1991に南北同時加盟を果たした。そんな国柄の事情もあって潘基文事務総長誕生は韓国の歴史的快挙だった。潘氏は「韓国の誇り」であり、「世界の大統領」という人さえいる。


特筆すべき功績がない国連事務総長

しかし、国連事務総長とは事務局トップとして各国の利害調整を行い、現代のテロリズム拡散や地域・宗教紛争、疫病、人道問題などの課題への取り組みにリーダーシップを発揮すべき役割である。ところが潘基文氏は就任以来、身内や韓国人を主要ポストに起用する縁故主義で批判を浴び、シリアの虐殺問題や頻発するISテロ、人権被害国からの訴えに口をつぐんで、その能力を問われた。

欧米ジャーナリズムは容赦なく「透明人間・潘基文国連事務総長」(英紙ガーディアン)、「潘基文さん、あなたはどこにいる?」(米ニューヨークタイムズ)などと無策無能ぶりを批判した。2010年、国連平和維持部隊(ネパール隊)がコレラ・ウイルスをハイチに持ち込み、訴訟となった問題では国際条約を盾に責任を回避する姿勢が各国から批判された。国連幹部の一人が退任にあたって潘氏の仕事ぶりを「嘆かわしい」「真剣に非難されるべきだ」「これでは国連事務局が腐敗の道をたどる」と抗議する文書を送ったこともあったほどだ。

潘氏は、1970年から職業外交官としてキャリアを重ね外相となった人物だ。激動の韓国史のなかで70年代からの30数年を時の為政者に仕えるのは何たいていではない。潘氏の外交官時代のあだ名が「官僚のなかの官僚」というのもうなずける。

そしていま、潘基文氏は「親中反日ナショナリズム」に同調し、ひたすら韓国史観に寄り添い活動しているように見受けられる。

そういえば今夏も、安倍晋三首相の「戦後70年談話」について国連報道官を通じて、「過去の歴史に対する反省に基づく真の和解が必要」などと語っていた。心ははや韓国である。国連史のなかに潘基文時代はどう記されるのか。目を懲らしてみてもこれといった功績は見いだせない。



平成28年8月16日更新



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久保田 るり子(くぼた るりこ)
産経新聞編集局編集委員