ボイスリレー Vol.004|新しい歴史教科書をつくる会

Header_837B83C83X838A838C815B.jpg

HOME > ボイスリレー > ボイスリレー Vol.004

「靖国参拝」への国際理解を

外務省に求めたい役割 戦争事務失態の反省を原点に


昨年末、12月26日、安倍政権発足から1年になるこの日、安倍首相は靖国神社に参拝した。韓国、中国が早々に異論をはさむのは織り込みずみだが、アメリカ政府も公式に「失望した」と表明したのは意外であった。

もっともこの国務省の表明は「がっかりした」という程度に訳すべきもので、アメリカの国益から見て、韓国など同盟国との関係を悪くするようなことはしてほしくなかったという程度であって、靖国参拝自体の是非を言ったものではないと受け取るのが正しいという説もある。というのも、安倍首相自身も言っているように、戦場に散っていった人たちの霊を慰めるのは「世界共通のリーダーの姿勢」であり、安倍首相がアメリカを訪問したとき、歴戦の兵士の眠るアーリントン墓地を訪ね献花するのを受け入れているからである。

しかし、これほど国際問題化した首相の靖国参拝は、今後、国際的に理解してもらうために努力していかなければならないだろう。

そこで言うのだが、この役割を直接に担うのは言うまでもなく外務省である。このことを言うとき、私は、外務省が日本を外に向かって我が国を代表する機関であるからという意味だけでなく、それ以外に付け加えなければならない歴史的な特別の意味があると思う。そのことを新年を迎えた現時点で国民とともに確認し、靖国問題の無事解決を求めたいと思う。

昭和16年12月8日(日本暦)、日本はアメリカに向けて戦端を開き、日米戦争が始まった。この戦争は言うまでもなく、日本が本来欲したものではなかった。できるならば避けたかった戦争であった。しかし、当時の外務省の能力不足によって避けられなかった。日米戦争が避けられなかったのは旧陸軍、旧海軍の軍部に多大な責任があることは言うまでもないが、外務省にも大いに責任があるのだ。

そればかりではない。日米開戦にあたって日本海軍はアメリカ真珠湾の奇襲攻撃を行ったが、外交的にはその30分まえに、「最後通告」をアメリカ政府に手交するはずであった。しかるによく知られているように、ワシントンの日本大使館の事務失態によって、手交は遅れてしまった。つまり、手交の約1時間前に真珠湾攻撃が始まり、日本海軍の真珠湾攻撃は名実ともに「騙(だま)し討ち」となった。

この手交の遅れが日米戦争のみならず世界戦争においてどれほど大きな意味を持ったか。

時のアメリカ大統領ルーズベルトは戦意昂揚の意味もあって、通告遅延は大使館の事務失態によることを事実上知りながら、これを計画的な「騙し討ち」として宣言した。そして日米戦争のみならず、世界大戦そのものをも最大限に拡大した。ドイツに対してはヒトラー政権が崩壊し、ドイツ軍が無条件降伏するまで戦いを強いた。日本に対しては中立条約のあったソ連をも誘い、ルーズベルトが1945年4月に死ななければ日本はソ連にも侵入されて分断国家になるまで戦争を強いられることになっていた。ルーズベルトの死によってその運命は避けられたものの原爆投下は避けられなかった。

日米戦争を始めとして世界大戦を最大限に拡大させたのはルーズベルト自身の問題であるが、しかし、そのやり方に明瞭な根拠を与えたのは、ワシントンの日本大使館の事務失態によって起きた真珠湾「騙し討ち」である。

話を靖国に戻すが、靖国参拝は戦場に散っていった人たちへの霊を慰める行為である。そうならば、外務省は自らの事務失態に起因して死ななくてよい人たちが多く祀(まつ)られることになったというこの原点を押さえて、外務省の長たる外務大臣は戦後一貫して靖国神社に参拝しておくべきであった。そうすれば靖国問題は歪(ゆが)められることはなく、外国から異論をさしはさまれることはなかったであろう。

しかるに戦後、外務省は一貫して靖国をないがしろにしてきた。

小泉純一郎政権時、アメリカのブッシュ大統領が明治神宮を参拝したことがあった。このときブッシュ大統領の明治神宮参拝は、靖国参拝を暗示してきたものに違いない。たとえそうではなかったとしても、このときこそ外務省は提案して靖国参拝に切り替えてもらうべきであった。

外務省には明らかに戦争責任がある。その戦争責任を隠して、すべての戦争責任を旧軍部に押しつけているところに、戦後の日本のすべての歪みの根源がある。自ら巨大な戦争責任を認めれば、逆にあの戦争にやむをえなかった面のあることも言わざるをえなくなろう。そうすれば日本の名誉もどれだけ正しく海外に伝えられることになったであろうか。

靖国問題もその例外ではない。外務大臣自らが靖国に参拝し、海外の誤解を解いてきていたら、今日の靖国問題は生じていなかった。外務省がこの因果の関係を踏まえて、真の責任に応えて対処すれば、靖国問題は必ず解決する。

平成26年1月23日更新



sugihara.png


杉原 誠四郎(すぎはら せいしろう)
新しい歴史教科書をつくる会 会長