ボイスリレー Vol.003|新しい歴史教科書をつくる会

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平成25年度定時社員総会会長挨拶


私ども「新しい歴史教科書をつくる会」は、日本の名誉を回復し、日本を取り戻すために、教科書の改善を進めている運動団体です。そのために、外には「つくる会」をつぶそうとやっきになっている勢力に取り囲まれています。そして内には、資金難というこれまた深刻な問題を抱えています。

しかしそれでも「つくる会」をつぶしてはならない、「つくる会」を何としてでも存続させていかなければならないという人々が、いまここに結集しております。

しかしながら、です。しかしながら、これは善意と情熱の下に集まっている運動団体の宿命ともいえますが、教科書を改善し、日本をまっとうな国にするという目的においては強く一致しながらも、運動の運び方についてはいろいろ考え方の違いが生まれます。

そのこともあって、昨年の総会よりこの1年を振り返り、会長として一言、挨拶を申し上げます。

昨年6月の総会以来のこの1年間、いちばん大きな懸案事項は、いうまでもなく、育鵬社の教科書『新しい日本の歴史』の盗作問題に対する対処でありました。

昨年6月の総会で、盗作の事実を公表し、公開で話し合い、正しく解決していくということを決議しました。

もとより、私ども「つくる会」は教科書改善運動団体として、よりよい教科書の普及を目指して、他社の教科書であってもよければよいものとしてともに普及の実績を上げるという善意を持っており、その責任を負っています。

育鵬社の教科書は、私ども「つくる会」から見れば、教育基本法遵守という点だけから見てもいまだ不十分な教科書ですが、自虐史観に満ち満ちた歴史教科書、持続可能な社会という観点を無視した公民教科書が猖獗(しょうけつ)を極めている現在の状況にあって、広くは採択されてよい教科書であり、そのため「つくる会」としては、育鵬社側とは対立すべきではないという強い世論があることは確かであり、その世論には「つくる会」としては十分に耳を傾けなければならない立場にあります。

しかしそのような対立を起こさない立場に立たなければならないという責任は、育鵬社側にあってもまったく同等にあります。

しかるに、です。昨年10月、育鵬社側の教科書で発見した盗作の事実を『歴史教科書盗作事件の真実』なる本を公刊し、育鵬社側に公開で話し合いを求めました。そして万一、話し合いで解決しない場合は法的手段に訴えざるをえない旨も通知いたしました。が、しかし、育鵬社側は話し合いには応じたものの、盗作の事実はついにいっさい認めようとはしませんでした。

話し合いの過程では、教科書を1種化し、結果として出版社も歴史・公民のそれぞれの教科書で1社化となる提案を行いました。この提案については事前に会員の皆様に十分な予告をしていなかったこともあって、一瞬、会内で大きな戸惑いが走りました。が、しかし、育鵬社との対立関係を解決し、よい教科書の普及にともに責任を負うという観点からは、やむをえないか、またはしなければならないものであったわけであります。当然ながら「つくる会」の設立趣意書を堅持した上での提案です。

実は、「つくる会」としては、教科書改善運動の前進のために対立関係の解消のために、前述『歴史教科書盗作事件の真実』を刊行し、文部科学省で記者会見をした際にも、育鵬社は高等学校の歴史・公民の教科書の制作に移るなどの棲み分け論を示唆しました。これも対立関係を克服し、ともに教科書改善の運動を前進させるように努力しようという考えの下にあったのであります。

このときの教科書の1種化、1社化の、急を求めるかのような提案は、育鵬社側にあって、育鵬社の教科書の制作に多大に協力をしている日本再生機構の理事長である八木秀次氏と育鵬社との間で厳しい対立が起きていることを認知したことも1つの強い契機となったことは確かです。

考えてみますに、教科書改善運動のためにある「つくる会」は、いわゆる分裂騒動で平成18年に分裂しましたが、本来、分裂している余裕はないものだったといわなければなりません。分裂騒動の際、歴史教科書の多くの執筆者は「つくる会」の設立趣意書の下に「つくる会」に残りましたが、

「つくる会」は出版社を失うことになりました。そのため、「つくる会」側は会員の浄財によって自由社を設立しましたが、規模は小さく、そのことが大きくは原因となって、いわゆる年表問題、文化史問題を引き起こしてしまいました。他方、育鵬社側は出版社では強固にありましたが、執筆陣を豊かに持っていませんでした。そのため育鵬社側は盗作事件を引き起こしてしてしまいました。

いずれにせよ、この教科書の1種化、1社化の提案は、訴訟を避ける努力の一環としては、どうしても提案しなければならないものでした。そしてさらに私たち「つくる会」としては、訴訟を避けるために、盗作という著作権侵害の事実に対して、事後的にその著作権の使用を許諾することによって、違法性を阻却するという提案もしました。

しかしそれでも、育鵬社側は、著作権の侵害をいっさい認めず、世間一般への謝罪も拒否したのです。したがって「つくる会」としては、訴訟に訴える以外に道はありませんでした。

かくして原告は、歴史教科書元代表執筆者の藤岡信勝氏1人によりますが、「つくる会」は4月15日、東京地裁に提訴したのであります。我々「つくる会」の主義主張を守るため、原告を引き受けていただいた藤岡理事には、会長として深く敬意を表するところであります。

なお、いわゆる文化史問題ですが、自由社の教科書が、育鵬社側に著作権のあるところから一部に無断で使用したところがあるというこの問題は、意図的に使用したものではないという意味においては盗作ではありませんが、著作権を侵害したということには違いなく、「つくる会」としては、当然に求められる対応をしなければなりません。そこで「つくる会」は、直ちにその事実を認め、公に謝罪し、著作権者に著作権料を支払う用意のあることを明らかにしました。著作権侵害について我々の要求していたことを、自らの場合にも厳格に適用したものとして、恥ずべきことはしなかったと自負しております。

さて、「つくる会」として、もう1点この1年を顧みて、重要な問題として「南京事件」や「従軍慰安婦」の問題があります。これらの問題については、本日の事業計画案でも出ますが、常に自虐教科書の格好の材料となっております。これらの問題は、例えば、「慰安婦」が「性奴隷」(セックス・スレイブ)と訳されたとき、なぜ、外務省は日本の名誉にかかわる問題として、それが誤訳であることを世界に向けて発信しなかったのでしょうか。またはしないのでしょうか。「従軍慰安婦」の原因となっているいわゆる「河野談話」も日本の外交の明らかな失敗であり、日本は、日本の外交を改めない限り日本の自虐史観を清算することはできないということを明らかにしています。よって「つくる会」としては、本年12月8日日米開戦日には外務省の無為、無策について集会を開き追及していきたいと思っております。

さらにもう1点、国民に広く、日本の歴史に誇りを持ってもらうべく、歴史講座を始めましたが、これも発展させていかなければなりません。

本日は冒頭で申しましたように、日本を取り戻すために「つくる会」をつぶしてはならないという会員が集まっている総会です。この根本目標においては全員強く一致しております。くれぐれもその根本目標の一致の下に結束し、熱心にして建設的な審議をお願い申し上げるしだいです。

(「新しい歴史教科書をつくる会」平成25年度定時社員総会 会長挨拶より)
平成25年7月12日更新



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杉原 誠四郎(すぎはら せいしろう)
新しい歴史教科書をつくる会 会長