民主党政権の崩壊と政界
政党は共通の主義主張を持つものが集まり、政権の獲得を狙う持続的集団である。しかるに、民主党は未だに綱領もないのである。もともと、旧社会党から自民党出身者までが集まる寄せ集め集団である。だから、常に求心力を欠き分列行進曲が聞こえている。
反自民党の一部マスメディアの「国の政治を一度変えてみよう」との呼びかけに応じて一票を投じた有権者は少なくない。巷では結果として「うっかり一票、がっかり四年」という声を聞く。政権運営についてのアマチュア集団の右往左往振りに国民はあきれて、民主党支持率はいまや野党の自民党の半分以下である。
何よりも、日本の安全保障の基軸である日米同盟を危うくした罪は大きい。米軍の普天間基地の名護市への移設という日米合意が存在するのに、「国外、最低でも県外」と言ったのは、民主党の鳩山由紀夫首相である。その後、日米合意に戻ったが首相退陣後はまた、元の言動に戻っている。迷走台風並みである。
会社でも、前社長がお得意先と約束したことを新社長が破ったら、対外的信用を一挙に失う。鳩山氏の言動は日米同盟の基礎を揺るがした。
内外に信を失った民主党政権
「一体、一国の外交は何よりも国際信用を基礎とすべきものである。誰であったか、『外交と金融はその性質を同じうする、いずれもクレジット(信用)を基礎とする』といったものがある。誠に至言である」(吉田茂著・回想十年1)。
民主党政権は同盟国にその信用を失ったのである。これが、領土問題などで周辺諸国に舐められることにつながっていないか。
また、鳩山氏は首相からの退陣時に、政界からの引退を示唆しながら後に撤回する。
そして、民主党から「党は(マニフェストで)やるといったことをやらず、やらないはずの増税をした」として、離党者が相次ぐ。「馬糞の川流れ」と評される惨状である。
最近は嘘を言うことを「野田る」と言うそうだ。8月に、「近いうちに国民の信を問う」として自公両党の協力を得て消費税増税を実現しながら、思いを遂げると早期解散の約束を守らないからだそうだ。首相は消費増税が成立したら、衆院解散で国民の信を問うと答弁していた。だから、早期解散は国民との約束でもある。政権延命のために約束を果たさない。民主党政権は内外に信用を失ったようだ。
統治能力も不足の民主党政権
人材が不足し、いつも同じ顔ぶれが党と内閣の間を行ったりきたりする。最も大切な総理の仕事の一つは人事である。司司に適材を配置することである。しかるに、野田内閣では問題閣僚が続出である。防衛大臣にまったく不向きなものが登用されて参議院で問責決議されている。防衛、安全保障軽視を印象付け、周辺国の侮りを受ける原因になっていないか。
小沢一郎党首の時代に、自民党政権との大連立構想があったが、民主党幹部の反対でつぶされた。やはり、その構想に乗って統治能力を高める必要があったようだ。
ところで、衆院選も近くなり、今年に入ってか新党の結成が相次ぐ。単なる「選挙互助会」から、根本からの国の建て直しを志すものまで様々である。数が多くて投票所で選択に迷う人もあるのではないか。
「国民は己のレベル以上の政治はもてない」と言われる。お互いにうっかり一票に懲りて、政党と政治家の真贋を見抜く賢い有権者でありたいものだ。
(書き下ろし)
平成24年11月7日更新