新しい歴史教科書をつくる会|<総括>これまでの「つくる会」運動と今後の方向について

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平成27年臨時総会 第一号議案 今期採択戦の総括について

<総 括>
これまでの「つくる会」運動と今後の方向について


この度の採択戦では、私立中学校では計9校(うち1校は副読本として)で採用されたものの、公立では1つも採択されない結果となりました。この4年間、私どもは何とか全国で採択を勝ち取るべく、本部理事はもとより支部や会員の皆様とともに、出来る限りの力を尽くしてまいりました。しかし、残念ながらその力及ばず、結果を出すことは叶いませんでした。この採択結果は、我々「つくる会」の努力に対して社会から突きつけられた現段階での評価であると重く受け止めております。全国の会員をはじめご支援をいただいた皆様には、まず、深くお詫び申し上げます。


採択されない原因は日本社会の構造的問題にある

理事会では、8月27日、9月17日、10月5日、15日、19日と5回にわたって、今回の採択戦と「つくる会」の今後について話し合ってまいりました。まず、採択戦がなぜ敗北に終わったのか話し合いました。この間の教科書作成から採択までの私どもの歩みを振り返りますと、大小多くの問題点があることは疑いようのないことです。これらの問題点については、調査委員会から受ける報告をしっかり受け止め、一つ一つ反省の上で今後に生かしていかなければなりません。

しかし、今回の敗北は、限られた財政とボランティア中心の活動の中、出来る限りの力をつくした結果でもあります。また、仮に「より完全な」教科書をつくり、採択に向かっていたとしても、本当に採択を大きく伸ばすことができたのでしょうか。

「つくる会」は設立以来、教科書づくりを中心に置いて、日本を取り戻すために歴史戦を一貫して戦ってきました。平成13年の最初の採択戦では、栃木県下都賀採択地区では、いったんは「つくる会」の教科書の採択が決まりながら、左翼からの激しい反対運動の末、他の教科書の採択が決定するというような事件がありました(いわゆる「下都賀事件」)。

左翼からの反対運動の標的にされるのは、「最右翼」として位置づけられた教科書の宿命であります。残念なことに、今回の我々の教科書のように「南京事件」はなかったとしてまっとうな教科書をつくれば、そのまっとうなはずの教科書が「最右翼」の教科書として位置づけられ左翼に猛攻撃されてしまうという日本社会・教育界の状況があります。各地の教育委員会としては、今でも「つくる会」の教科書の採択は相当に勇気が要ることなのです。

以上のように、私たちの教科書が採択されないことは、歴史的につくられた日本社会の構造的問題に起因するものと言えます。我々は日本を取り戻す、まっとうな、よい教科書をつくらなければならず、しかし、それゆえに採択されない現実がそこにあるのです。


教科書改善運動を前進させてきた

「採択」で結果を出せないのが日本社会の構造的な問題にあるとすれば、「つくる会」は教科書を作る必要がないのでしょうか。そして、教科書を作らないとすれば、「つくる会」はもはや解散した方がよいのでしょうか。理事会では、当然にこのような疑問が生まれてきました。そこで、理事会では、解散すべきか存続すべきか考えるために、平成9年設立以来の「つくる会」18年の運動をふり返ってみました。

「つくる会」が一番力を入れてきたのは、当然ながら、教科書づくりと採択を勝ち取ることです。「つくる会」は、『新しい歴史教科書』で5回、『新しい公民教科書』で3回、検定合格し、それぞれ5回、4回の採択戦に臨んできました。検定においても採択においても、たえず様々な困難に見舞われてきました。しかし中学校の教科書記述を目覚ましく改善させてきたことも事実です。これまでの長年の活動によって、「つくる会効果」といえるものがはっきりと生まれているのです。

昭和61年には高校教科書『新編日本史』の検定で、外務省が中国の意向を受けるかたちで教科書検定に介入する事件がありました。さらに平成12年には、外務省が検定途中において「つくる会」の歴史教科書を不合格に持ち込む画策をしました。これは未遂に終わりましたが、このような外務省の教科書介入は、「つくる会」が主導した教科書改善運動が全国に広がった現在では、夢にも考えられない状況になっています。

教科書の記述内容では、平成8年、中学校のすべての教科書に「従軍慰安婦」が載りましたが、現在では今回新規参入の学び舎の教科書を除いて消えています。また、昭和57年、いわゆる「教科書誤報事件」によってできた「近隣諸国条項」によって「侵略」の用語が、一時はすべての教科書で使われていましたが、現在ではわずか3社の教科書に残るのみです。もう少しで、教科書から「侵略」用語を追放することができるところまできているのです。安倍談話が「侵略」という用語を使いながらも直接には満州事変以降の戦いを「侵略」と規定せずに済んだ背景には、このような教科書記述の改善が存在するのです。

また、「つくる会系」として社会的に認知されている育鵬社の歴史・公民教科書は、我々から見れば健全な国家意識の涵養において残念ながら必ずしも十分な教科書とはいえませんが、他の自虐的な教科書から比べればはるかに健全な教科書です。その育鵬社が今回、歴史で6パーセント以上、公民で5パーセント以上採択を取ったことは、教科書改善運動全体の観点からすれば、改善が進んでいると結論づけることができます。

我々「つくる会」の教科書は「最も」健全であるがゆえに、構造的問題として「最右翼」に位置づけられ、それゆえに左翼からのすべての矢玉に晒され、採択されず倒れていきます。そしてその後を進んだ育鵬社が採択を勝ち取りました。「採択される」という戦果は彼らの独占するものになりましたが、自虐史観の教科書の排除が進んだという点ではそれだけ成功したということになります。


教科書づくりを通じて、歴史戦を最前線で戦ってきた

「つくる会」が果たしてきた役割は、教科書改善運動の領導だけではありません。平成24年には「南京の真実」国民運動を、25年には「慰安婦の真実」国民運動を呼びかけ、それらの運動を中心的に進めて参りました。今、「南京事件」と「従軍慰安婦」問題を中心に戦われている中韓との歴史戦において「つくる会」が果たしてきた、且つ果たしていくべき役割には大きなものがあります。

先日、中国が申請していた「南京事件」に関する無意味な資料の、ユネスコ記憶遺産への登録が決定しました。しかし、「つくる会」効果により、教科書は「南京大虐殺」から「南京事件」に位置付けを変えてきました。そして、今回の私たちの教科書は、「南京事件」を記述しませんでした。日本の文科省の検定を通った教科書の中に「南京事件」を書かないものが一つでもある、という事実は今後、記憶遺産登録の撤回運動をすすめる上で、一つの拠点となり得るものです。また当然、国内の歴史認識においても、私たちの教科書の存在は、その改善に向けての新たな第一歩となるはずです。

以上、この約18年間の多くの会員の皆様の力によって推進された「つくる会」運動は日本社会に本当に大きな「つくる会効果」を生み出し、教科書改善運動を引っ張り続け、そして、まさに今展開されている歴史戦においても、その最前線で戦っているのです。採択という数字に表れてはいなくても、ここに私たち「つくる会」運動の大きな意義と使命がはっきり見えています。



「つくる会」は、今後も教科書を通じた歴史戦を戦う

以上のような認識に達し、10月5日の理事会では、「つくる会」は今後も存続して教科書作りを行い、そのことを通じて歴史戦を戦うべきだという結論に達しました。そして、10月15日理事会で、執行部全員が辞任した上で、この結論に適う新会長を全会一致で選出し、新会長の指名に基き副会長を選びました。

採択が不調に終わった現在、財政的な視点からすると、自由社そして「つくる会」ともに大変厳しい状況にあります。次回の教科書採択を目指して活動を続けていくための財政的基盤は全くもって確立されていません。さらには、もしそれが果たせたとして、上記敗因を考えれば、残念ながら採択状況を改善するには多くの困難が伴うでしょう。

しかし、繰り返しになりますが、「つくる会」に課せられた運動の意義と使命は、今なお大きく存在しているのです。かつて台湾の李登輝総統もまた、「つくる会」が無くなって喜ぶのは中国と韓国だ、と仰っています。中韓との歴史戦に勝ち抜くためには、「つくる会」がしっかりと活動し続けることが大切なのです。