民主主義や自由の大切さを子供たちに教えるために必要

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民主主義や自由の大切さを
子供たちに教えるために必要

拓殖大学教授 ぺマ・ギャルポ

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 『新しい公民教科書』を一読して、これは現在の日本に必要な教科書だと確信した。
 まず、20頁の「宗教とは何だろう」に記された、宗教とは、自然の恵みにより自分が生かされていることへの感謝と、自分を越えた存在への敬いと畏おそれから生まれてきた、という真理は、ぜひとも子供たちに教えてもらいたい。そして、ほとんどの宗教はいくつもの戒めを持ち、善悪の区別を示し、同時に自らを律すれば個人の幸福と社会の平安を得られると説いている。これこそ、現代社会に欠如している、自分の行いへの責任と物事の分別を教えてくれる。
 30頁の、自国への深い愛国心こそが他国への尊重や国際社会の平和につながるという指摘も、国際化が進んでいる現在だからこそ子供たちにしっかりと学ばせておかなければならない。
 54頁の「日本の立憲的民主政治」では、明治時代の大日本帝国憲法の意義が簡潔に説明され、また、その立憲政治が機能しなくなったことから日本の政治がゆがんだこともきちんと反省とともに示されている。そして、戦後の日本国憲法にはその成立過程に大きな問題があることが指摘され、しばしば議論となる第9条と自衛隊の問題についても、84頁「わが国の安全保障の課題」で、公正な立場から複数の解釈と、今後のあり方が紹介されている。憲法改正の是非が論じられている現在、この問題は教育の場でも避けて通れないはずだ。
 134頁「企業はだれのものか」は、これから社会に出ていく、或いは将来経営者になるかもしれない子供たちには絶対に覚えておいてほしい「経世済民」としての経済学の基本だ。会社は従業員のものであり、同時に社会全体のものだという発想を失ったことが、日本企業の伝統的な良さを失わせ、社会格差や安易なリストラを招いたのだ。
 最後に、チベット人として、この公民教科書が、181頁では天安門事件や劉暁波のこと、186頁では「近隣諸国の人権問題」として、チベット、ウイグル、内モンゴル、北朝鮮、韓国などの人権問題を取り上げてくれたことに感謝したい。チベット120万人虐殺と現在も続く焼身抗議、ウイグルにおける強制収容所、南モンゴルの虐殺と環境破壊、北朝鮮の人権弾圧や韓国における「親日派」への言論弾圧などは、どれも否定できない事実だ。
 このような人権問題を取り上げることは、決して近隣諸国を敵視することではない。むしろ、弾圧を受けている人々に共感や関心を抱かせ、また、日本国が今享受している民主主義や言論の自由の大切さへの自覚を子供たちに教えるためにも必要だ。ぜひ全国の心ある教育委員会や先生方に、本書を教育の場に採択することを切望する。