各社の教科書を読む 公民編1|新しい歴史教科書をつくる会

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日本文化……体系的な日本文化論がない




平成20年版学習指導要領は、「現代社会における文化の意義や影響を理解させるとともに、我が国の伝統と文化に関心を持たせ、文化の継承と創造の意義に気付かせる」と記している。

長らく、無視されてきた文化を重視し、更には日本文化を重視する姿勢を打ち出したのである。この影響は前回検定を経て、今回の検定教科書には如実に現れている。全社が日本文化に多くの頁を割くようになったばかりか、日本文化の特色を明らかにしようとはしている。


日本文化の特色を明らかにした自由社

にもかかわらず、体系的な日本文化論を築き得ているのは、自由社だけである。自由社は、単元5【文化の継承と創造】で、日本文化の特色を4点でまとめている。

すなわち、在来文化の上に外来文化を融合する《文化の調和と融合》、和の精神に基づく《社会の融和と連帯》、「ものづくり」の文化伝統に代表される《勤労と勤勉》、《自然との共存》という4点である。

4点のうち最も重要なのが第2の《社会の融和と連帯》という点である。自由社は次のように説明している。

「私たちの祖先は、国や社会などを形成し維持していくにあたって、国内、組織内の融和と連帯を重視し、組織を構成するメンバー一人ひとりを大事にする和の精神を大切にしてきました。」(10~11頁)。

この「和の精神」あるいは《社会の融和と連帯》の精神が、天皇と幕府等の実力者を共存させ、権威と権力の分離の体制を生み出した。そして、天皇がもっぱら政治的権威の役割を果たして、幕府や政党といった時々の政治権力に正統性を与えてきたわけである。

他には、帝国が比較的体系的な日本文化論を展開しているといえる。帝国は、「外来文化を受け入れてきた日本の文化」と「自然と一体化した日本の文化」という小見出しの下、自由社が挙げた四点を全て挙げている。自由社の影響を受けたのであろう。


多数派教科書における体系的日本文化論の欠如

これに対して、他の5社は、日本文化の特色論としては、基本的に「ユーラシア大陸の東に位置する日本は、大陸文化の影響を受けながら歴史的に独自の文化を形成してきました」(東書18頁)と書くだけであり、第1の特色しか挙げることができないでいる。後は、せいぜい「自然との共生」という表現で《自然との共存》という特色を挙げている程度である。今後、各社には、日本文化論の掘り下げを期待したい。     


平成27年6月23日更新