新しい歴史教科書をつくる会|「史」から 平成24年1月

fc.png

HOME > 「史」から > 平成24年1月

 私は現在、戦史検定事業に携わっている。平成22年からスタートした検定で、出題範囲は昭和の時代に限定、毎年11月下旬に実施している。今年(平成23年)、私は実行委員長として、第二回目の「初級」および第一回目となる「中上級」の試験を実施した。

 この戦史検定の目的は二つある。一つは戦没者慰霊碑の修復・保全のための費用を捻出すること。運営スタッフは私が主宰する近現代史研究会(PandA会)の有志メンバーと「JYMA日本青年遺骨収集団」に所属する学生達である。海外などで戦没者慰霊碑が風化する現状を目の当たりにし、「修復費用を捻出する仕組みを作れないか」という思いから検定事業をスタートさせた。彼らは全員が手弁当でこの事業に参加している。

 そしてもう一つの目的は、若い世代に戦史を学ぶきっかけを持ってもらうことである。私自身もそうだったが、学生時代に戦争について学ぶ機会はまったくと言っていいほどなかった。いや、正確には「ヒロシマ・ナガサキ」だけである。今も、祖国から遠く離れた南溟瘴癘の地、あるいは凍てつく大地で戦闘があったことを知らない若者は多い。これはまったく教育の弊害だが、それを嘆いてばかりいても仕方がない。

 私は「知るきっかけ」は何でもいいと思っている。書籍であっても、映画であっても、検定であっても。そして実際に「昭和」という空白の時代を詳しく知りたいと思っている若者も少なくない。ただ彼らは何から勉強を初めていいかわからない。そのため、私達は「初級」受検者を対象として、前日に「直前セミナー」を開催し戦史をわかりやすく解説している。いわば本検定を近代の歴史に関心を抱く扉の一つとして位置付けているのだ。

 戦史を検定するなどケシカランと考える方もいるかもしれない。しかしながら「あのとき何があったのか」という基礎的な知識が備わっていなければ、そもそも歴史の視座は得られない。したがって検定(とくに「初級」)では基礎的な事柄を把握することに重点を置いている。

 第二回目の戦史検定は、「中上級」を加えたこともあり、延べ350名ほどの老若男女が受検してくださった。十代から八十代まで、幅広い世代に興味を持ってもらった結果だと嬉しく思っている。今回の収益(事務費を除く)は、東日本大震災で被害を受けた戦没者慰霊碑の修復費用として、福島県遺族会に寄付する。まだヨチヨチ歩きの検定事業だが、戦史への無知・無関心の風潮に一石を投じることができたらと思っている。

 ちなみに五名以上であれば事務局が出張し、団体受検も可。ご希望の方は以下のHPよりお問合せを。
 http://www.senshikentei.org/



sasa.png
             ©新潮社

笹 幸恵 (ささ ゆきえ)
ジャーナリスト